保険料の免除・猶予・追納
保険料の免除・猶予制度
国民年金には、所得が少ないなどの理由で保険料を納めることが困難な場合、免除してもらえたり猶予してもらえる制度があります。
免除には法定免除と申請免除の2種類があります。
法定免除
次のいずれかに該当する場合は、届出することによってその期間の保険料が免除されます。
- 生活保護法により生活扶助を受けるとき
- 障害基礎年金(1級・2級)を受けるとき
- ハンセン病療養所等の施設入所者
免除期間は、年金の受給資格期間に含まれます。また、老齢基礎年金の計算の際は、免除期間の部分の年金額を3分の1(平成21年4月以降の免除期間については2分の1)として計算します。
申請免除
申請することで、保険料が免除になったり、納付を待ってもらえる(猶予)制度があります。所得基準や年齢に応じて、全額免除・一部納付(免除)制度・ 若年者納付猶予制度の3つの制度があります。
保険料を未納のまま放置すると、後からもらえる年金の額に大きく影響してきます。下手するともらえなくなる可能性もあるので、納められない場合は免除・猶予制度を活用しましょう。
なお、免除・猶予制度には学生及び任意加入の方は対象外ですが、学生の方には別の学生納付特例制度があります。
全額免除
その名のとおり、保険料の全額(平成23年度は15,020円)が免除されます。
本人・世帯主・配偶者の前年所得が次に示す所得基準額以下の場合、申請によって保険料が全額免除になります。
所得基準 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
計算式・・・(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
つまり、単身世帯で57万円以内。扶養親族が1人増えるごとに+35万円です。
この基準は、申請者本人の他、配偶者・世帯主の方も所得基準の範囲内である必要があります。なお、申請の時期によって、前々年の所得で審査を行う場合があります。
一部納付(免除)制度
全額免除と同様に、本人・世帯主・配偶者の前年所得が次に示す所得基準額以下の場合、申請によって保険料の納付が一部納付(一部免除)になります。一部納付制度は、全額免除よりも所得基準が緩やかです。
一部納付制度には3種類あり、4分の1納付・2分の1納付・4分の3納付の3つがあります。それぞれの納付額と年金額の計算が異なります。
所得基準 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
計算式
- (4分の1納付の場合)
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 - (2分の1納付の場合)
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 - (4分の3納付の場合)
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
一部納付は、扶養親族等控除額と社会保険料控除額等が計算式に入るため、金額についてはケースバイケースなところがあります。大まかな目安としては、以下の金額となります。
世帯構成 | 全額免除 | 一部納付 | ||
---|---|---|---|---|
1/4納付 | 1/2納付 | 3/4納付 | ||
4人世帯 (夫婦、子ども2人) |
162万円 | 230万円 | 282万円 | 335万円 |
2人世帯 (夫婦のみ) |
92万円 | 142万円 | 195万円 | 247万円 |
単身世帯 | 57万円 | 93万円 | 141万円 | 189万円 |
一部納付は、納付額(免除額)の段階に応じて、将来給付される年金額が変わります。
- (4分の1納付の場合)
年金額 5/8(平成21年3月分までは1/2) - (2分の1納付の場合)
年金額 6/8(平成21年3月分までは2/3) - (4分の3納付の場合)
なお、一部納付(一部免除)制度は、保険料の一部を納付することにより、残りの保険料の納付が免除となる制度です。一部保険料を納付しなかった場合、その期間の一部免除が無効となり、未納と同じ扱いになりますので注意が必要です。
若年者納付猶予制度
保険料免除制度の所得審査は、申請者本人のほか、配偶者や世帯主の所得も審査の対象となります。そのため、申請者本人と配偶者が所得基準を見たいしていても、一定額以上の所得がある親(世帯主)と同居していた場合は、免除制度を利用することができません。
そこで、他の年齢層に比べて所得が少ない若年層のために設けられた制度が、若年者納付猶予制度です。30歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合には、申請により保険料の納付が猶予されます。上述の免除制度と異なり、所得審査の対象に世帯主が含まれていない点がポイントです。
所得基準 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
計算式・・・(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
所得基準の額は、全額免除と同じです。
納付猶予期間は、将来受け取る年金の受給資格期間としてカウントされますが、年金額には反映されません。猶予期間の分を年金額に反映させるためには、追納(後払い)を利用します。
なお、障害基礎年金・遺族基礎年金については、不慮の事態が生じた月の前々月以前の1年間に保険料の未納期間があるときは、これらの給付を受け取ることができない場合があります。
学生納付特例制度
学生には、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。 本人の所得が一定以下の学生が対象となります。なお、家族の方の所得の多寡は問いません。
所得基準(申請者本人のみ)
計算式・・・118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
学生とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、専修学校及び各種学校(※1)、一部の海外大学の日本分校(※2)に在学する方で 夜間・定時制課程や通信課程の方も含まれます。そのため、ほとんどの学生の方がこの制度の対象となります。
(※1)各種学校
修業年限が1年以上の課程に在学している方。(私立の各種学校については都道府県知事の認可を受けた学校)(※2)海外大学の日本分校
日本国内にある海外大学の日本分校であって、文部科学大臣が個別に指定した課程に在籍する方
(以下は平成22年4月時点)
・テンプル大学ジャパンの一部の課程
・カーネギーメロン大学日本校
・レイクランド大学ジャパンキャンパス
・専修学校ロシア極東大函館校
・天津中医薬大学中薬学院日本校
・コロンビア大学ティーチャーズカレッジ日本校
学生納付特例は、若年者納付猶予と同様に、将来受け取る年金の受給資格期間としてカウントされますが、年金額には反映されません。猶予期間の分を年金額に反映させるためには、追納(後払い)を利用します。
保険料の追納について
老齢基礎年金は、25年間の受給資格期間をクリアすればもらうことができます。が、もらえる金額は、40年払ってようやく満額受給となります。
受給できる年金額を計算する際、保険料の免除や猶予を受けた期間がある場合は、保険料を全額納付した場合と比べて年金額が低くなります。
そこで、期間が足りない場合はもちろんですが、免除等を受けた期間の保険料についても、後から納付(追納)することで、将来の給付額を増やすことができます。
免除等されていた期間に対する追納時の注意点
- 追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られています
- 3年以上前の免除等期間の保険料を追納する場合は当時の保険料額に加算金が付きます
FPのワンポイントアドバイス
上述の免除・一部納付・猶予は、資格期間としてカウントされるのが一番のメリットです。
しかし、免除などの基準として、世帯主の所得が対象になっています。親と同居している場合などに、これがひっかかることがあります。30歳未満であれば若年者納付猶予制度がありますが、30歳以上は使えません。
もし、世帯主の所得が多いために免除や一部納付にできない場合には、世帯を分けるという方法があります。世帯を分けると国保の保険料が変わるので、家全体での保険料が増える可能性はありますが、世帯主の所得とは切り離せます。
但し、これをしたからといって免除等が承認される保証はありません。判断は役所次第です。が、可能性はある話なので、窓口で相談してみましょう。
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