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判例18-相続回復等請求控訴事件(平成18年3月29日)

裁判年月日 平成18年 3月29日
裁判所名 名古屋高裁
事件番号 平18(ネ)791号
事件名 相続回復等請求控訴事件
裁判結果 控訴認容、原判決一部取消

主文
 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
 2 被控訴人の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。 
 
事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴の趣旨
 主文同旨
 2 控訴の趣旨に対する答弁
  (1) 本件控訴を棄却する。
  (2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
 1 本件は,Aの相続人である被控訴人が,同じく相続人で兄である控訴人がAの相続財産である預貯金及び国債(以下「本件預貯金」,「本件国債」といい,併せて「本件預貯金等」という。)を解約又は出庫し,控訴人名義の預金口座に入金又は入庫するなどして被控訴人の法定相続分を侵害したなどと主張して,相続回復請求権又は不法行為に基づく損害賠償として,上記預貯金等の合計額1119万9937円のうち,自己の法定相続分5分の1の割合に相当する223万9987円及びこれに対する最終不法行為の日である平成4年10月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めたところ,控訴人が,①本件預貯金等はAの遺産ではない,②仮に遺産であるとしても,被控訴人は遅くとも平成4年10月8日には相続権が侵害されたことを知ったから,5年後の平成9年10月8日の経過をもって相続回復請求権の消滅時効が完成したなどと主張して,これを争った事案である。
 原審は,①本件預貯金等はAの遺産である,②相続回復請求権の消滅時効を主張するには,控訴人において,自らの本来の持分を超える部分について自らに持分があると信じられるべき合理的事由があることを主張,立証する必要があるところ,本件預貯金については上記合理的事由はないが,本件国債についてはそれがあったと認められるから,本件国債についてのみ相続回復請求権は時効により消滅したとして,本件預貯金の合計額1016万5537円の被控訴人の相続割合5分の1相当額である203万3107円及びこれに対する上記遅延損害金の支払を求める限度で被控訴人の請求を認容し,その余を棄却したため,控訴人が認容部分を不服として控訴したものである。

第4 結論
 以上によれば,その余の争点を判断するまでもなく,被控訴人の本件預貯金に関する本件請求は理由がなく,これと結論を異にする原判決は相当でないから,本件控訴は理由がある。
 よって,主文のとおり判決する。
  (裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官 林道春 裁判官 山崎秀尚) 

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